「超新星」とは違う、赤い増光

高光度赤色新星は、恒星同士の接近や合体に関わると考えられている、明るく赤い突発現象です。典型的な核崩壊型超新星と同じ物理現象ではありません。星がもう一つの星をのみ込み、外層にエネルギーを与えれば、ガスが膨張して放射する光の時間変化が生じ得ます。

最近の観測から、ベテルギウスの周囲に伴星が存在する可能性が議論されています。著者らは、伴星の軌道が潮汐作用で縮み、いずれ外層へ入り込むというシナリオを仮定しました。「数千年以内」という時間尺度も、この可能性を条件としたもので、確定した予報ではありません。

伴星の重さを変えて計算する

著者らは、伴星の質量を太陽の0.7倍、1.0倍、2.0倍とする三つのモデルを用意しました。まず連星の恒星進化を計算して共通外層進化の始まりを求め、続いて伴星の破壊、エネルギーの投入、恒星外層を進む衝撃波を一次元の放射流体計算で追っています。

計算では、伴星が重いほど初期の光のピークは明るくなりました。最大光度は約2.44×10⁴¹〜6.17×10⁴¹ erg/s、初期ピークが半分の明るさ以上を保つ幅は約1.48〜1.99日という結果です。地球から見れば金星よりも明るくなると予測されています。ただし、これらは特定の連星モデルと放射流体モデルの下で得られた数値であり、現実の将来の明るさを観測から保証したものではありません。計算は初期の光に重点を置き、既存の星周物質との相互作用を含みません。著者らは、ピーク光度はおおよその上限、継続時間は下限となり得ると述べています。

三つの伴星質量を仮定した計算上の光度曲線。伴星が重いモデルほど初期ピークが高い。横軸はピークからの日数、縦軸は全波長を合わせた光度。
図1(原著 Figure 4)三つの伴星質量を仮定した初期の光度曲線。横軸はそれぞれのピークからの日数、縦軸は全波長を合わせた光度です。実線は伴星の質量と軌道・破壊時のエネルギーを含む模型、破線は軌道エネルギーのみを与えた比較模型を示します。いずれも計算上の予測です。 出典:Naunet Leonhardes-Barboza, Andrea Antoni, Morgan MacLeod, Angela Twum & Enrico Ramirez-Ruiz(2026)、原著 Figure 4(arXiv v1) · CC BY 4.0。原著のSVG図を加工せず掲載し、日本語の説明を添えました。

初期の光に、のみ込まれた星の手がかりがある

伴星が破壊されると、その物質や運動エネルギーがベテルギウスの外層に加わり、衝撃波の振る舞いを変えます。著者らは、最初の増光の強さが伴星の質量に応じて変わることを示しました。もし似た現象を十分早く観測できれば、のみ込まれた伴星の性質を推定する手がかりになるかもしれません。

モデルでは、太陽の約6.15〜11.19倍に相当する水素に富む物質が放出され、星の外層と周囲の環境が大きく変化すると予測されています。これは将来の核崩壊に至る前の星周物質の状態を考えるうえでも重要です。ただし、計算された放出質量を実際のベテルギウスで測定した値と混同してはいけません。

仮説から、観測で確かめられる問いへ

この論文は、「ベテルギウスがもうすぐ爆発する」というニュースではありません。伴星が存在し、軌道が縮み、合体へ至るという条件を置いたとき、初期の光が何を教えてくれるかを調べた理論研究です。

よく知られた星を題材にした計算だからこそ、モデルの仮定と現実の観測を分けて考えたいものです。もし別の星で高光度赤色新星が観測されれば、その最初の数日間の光が、この研究の予測を検証する材料になるでしょう。