光が弱いのは、爆発が弱いからか

電子捕獲型超新星は、スーパーAGB星がたどり得る進化の終点として理論的に考えられています。しかし、標準的なモデルが予想する明るさは、ILRTの観測された明るさより高いことがあります。そこで考えられてきたのが、爆発前の星を包むダストの働きです。

スーパーAGB星が質量放出によってダストを含む恒星風を作っていたなら、爆発で生まれた可視光はダストによって弱められます。もともと明るい爆発でも、遠くからは暗く見えるかもしれません。もっとも、ダストは光を単に「消す」わけではありません。吸収されたエネルギーは別の波長で放射されます。この再放射まで考えなければ、観測された色や時間変化と比較することはできません。

明るさと色を同時に説明できるか

著者らは、既存の電子捕獲型超新星の光度曲線の予測に、ダストによる減光と再放射の模型を組み合わせました。爆発の放出物と恒星風を球対称と仮定し、恒星風の質量放出率や爆発モデルのパラメータを変え、ILRTの光度曲線と色の変化を再現できるか調べています。

結果は単純な成功ではありませんでした。いくつもの条件を変えても、時間とともに変わる明るさと色を、同時にうまく説明するのが難しかったのです。可視光の明るさだけを合わせればよいという問題ではないことが、ここに表れています。

一つの説が棄却されたわけではない

この結果から「ILRTは電子捕獲型超新星ではない」と言い切ることはできません。著者らが示しているのは、検討した標準的な電子捕獲型超新星モデルに、ダストの効果を加えただけでは説明が難しいという点です。爆発前のダスト分布や爆発エネルギーなど、モデルの前提にも不確実性があります。

著者らは代替的な可能性として、爆発エネルギーが約10⁴⁸〜10⁴⁹ ergという、ずっと弱い電子捕獲型超新星の集団、あるいはそのような低エネルギーを実現する別の爆発機構を挙げています。これは新しいタイプの爆発の発見報告ではなく、観測を説明するために何が必要かという理論的な提案です。

電子捕獲型超新星モデルの明るさと色の時間変化を、二つの突発天体の観測と比較した複数のグラフ。
図1(原著 Figure 7)上段は光度、中段は色B−Vの時間変化、下段はモデルの波長ごとの放射です。曲線はダストや衝撃波の条件を変えた計算、点はNGC 300-OTとSN 2008Sの観測値です。光度がおおむね合う条件でも、計算された色は観測より赤くなることが分かります。図は球対称などの仮定の下での比較です。 出典:Yuma Takeichi, Daichi Tsuna, Daichi Hiramatsu, Morgan MacLeod, Masato Sato(2026)、原著 Figure 7(arXiv v1) · CC BY 4.0。原著画像を加工せず掲載し、日本語の説明を添えました。

ダストが照らす、モデルの限界

星の周囲にあるダストは、爆発を観測する私たちにとって邪魔なものに見えます。しかし、減光と再放射を合わせて調べれば、爆発前の質量放出や周囲の環境も考える手がかりになります。

この研究が教えてくれるのは、観測された暗さだけに合うモデルでは十分でないということです。同じ天体の明るさと色がどう変わるか。その両方を説明できるかどうかが、星の最期を理解する試金石になります。