星の晩年が、次の星の材料を作る

AGB星などの進化星は、内部で作られた元素を、恒星風とともに星間空間へ返します。放出されたガスが冷えれば分子ができ、やがてダストも形成されます。宇宙の物質循環を理解するには、恒星内部の元素合成だけでなく、外へ出た物質がどう変化するかを調べなければなりません。

著者らは、恒星風が星の重力を振り切る仕組みには未解決の問題が残ると整理しています。脈動、表面の対流、ダストに働く放射圧に加え、磁場や伴星の影響も検討対象です。ホワイトペーパーでは、これらの過程を結び付けて検証する観測が必要だと論じています。

風が生まれる場所を、分けて見る

著者らは、星の表面とそのすぐ外側の領域を、時間を追って観測することを提案しています。分子やダストができる場所、ガスが加速される場所を分離し、それぞれの変化の時間的な関係を調べるという構想です。

星の表面付近を細かく見るには、ミリ秒角という非常に小さな角度を見分ける必要があります。ALMAは多数のアンテナを組み合わせ、ミリ波やサブミリ波でそのような観測を行う装置です。分子線やダスト放射に加え、偏光を使えば磁場に関する手がかりも得られます。

距離と星の見かけの大きさを比較する図。現在のALMAと将来の分解能の仮定を水平線で示し、将来分解できる星の増加を例示する。
図1横軸は距離、縦軸は見かけの大きさです。恒星半径を2.5 auと仮定し、星の半径・直径・ダスト形成域のスケールと観測対象を比較しています。水平線の約20 masと約7 masは、現在の代表値と将来の改善を例示する仮定。感度の制約を別に考えた分解能の試算であり、ALMA2040の確定仕様や達成済みの性能ではありません。 出典:Luis Velilla-Prieto et al.(2026)、原著の図1。© 著者。 原著図・キャプション · CC BY 4.0。図領域を抽出、余白をクロップ(色・内容の変更なし)。
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拡大図:距離と星の見かけの大きさを比較する図。現在のALMAと将来の分解能の仮定を水平線で示し、将来分解できる星の増加を例示する。

いま見えている星と、まだ届かない星

著者らは、近くのAGB星R Doradusの表面の対流と時間変化など、現行ALMAで得られた先行研究を紹介しています。これらの既存成果を出発点として、さらに広い標本で恒星風の仕組みを検証することを提案しています。

著者らが指摘する制約は、星の表面に迫れる対象が近傍の少数に限られることです。遠い星の微弱な分子線まで比較するには、感度と分解能の両方が必要だと論じています。一つの星で見つかった構造が、別の種類の星にも共通するかを調べることが、その目的です。

少数の特別な星から、多数の星の比較へ

このホワイトペーパーでは、著者らが高い角度分解能や感度、広い周波数範囲を効率よく観測する能力、偏光測定、反復観測などを求めています。星の表面からガスが流れ出す領域を、より多くの天体について比較するための提案です。

著者らは、NESSという進化星の標本で、恒星本体を分解できる対象が32個から149個へ増える可能性を試算しています。ただし、恒星半径と分解能を一定の条件で与えた比較であり、感度の制限を含みません。その数の星を必ず観測できるという予告ではありません。

何を確かめる望遠鏡にするか

著者らは、標本を増やすことで、質量放出率やガスの形と、脈動、化学組成、磁場との関係を統計的に調べられると期待しています。また、反復観測で対流・脈動と質量放出の時間的な関係を検証することも提案しています。いずれも将来の観測による検証課題です。

このホワイトペーパーで著者らが示しているのは、今後必要な観測能力の構想です。仕様や完成時期が決まった装置の説明ではありません。著者らは、精細な画像を得ること自体ではなく、質量放出の物理を理解するために必要な観測を論じています。